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ご挨拶

脳科学ユニット長 教授:佐藤克也1990年,米連邦議会は「脳の10年」を決議した。20世紀最後の10年に向けて,脳研究を国全体で推し進めようという宣言は世界の注目を集めた。だがこの動きは米国の先進性を示していたわけではない。この頃画像研究を中心に脳の研究手法の開発が一通り出そろい,脳機能に迫る準備が整いつつあり「脳の10年」は脳科学にたずさわる研究者の共通の思いだったといえる。90年代脳研究は徐々に分子生物的な手法をとり入れた研究が開始され、「21世紀は脳時代である」と言われるようになった。日本でも、2016年5月に伊勢志摩で開催されるG7サミットへ向け、G7を含む13カ国およびアフリカ地域のアカデミーで構成されるサイエンス学術会議は3つの科学政策提言の一つに「脳の理解、疾病からの保護、国際的な脳関連リソースの開発」を掲げ、脳科学の重要性が示されています。

脳科学は飛躍的発展期を迎え21世紀を代表する科学分野として注目されています。複雑な人間の脳の活動を理解するには、ゲノム・蛋白・RNA・病理・画像解析を必要とし、神経解剖学、神経生理学、神経薬理学、神経感染症学・神経病理学・放射線医学と多岐にわたる専門家集団の形成が必要である。また臨床分野(精神医学、神経内科学、脳外科学、麻酔科学)においては、子供から高齢者まで様々な疾患の病態解明と克服がテーマであり、リハビリテーションの分野においては脳科学に基づいたリハビリテーションの促進とリハロボットの開発が求められています。

長崎大学では医学部・薬学部それぞれにおいて、発達障害・老化や神経疾患の病因解明及び予防・診断・治療法の開発を目指した基礎研究、臨床研究がなされています。発生・発達の分野は有賀教授、篠原教授のユニークな研究があり、大学病院には児童思春期精神医学診療部が設置され、今村教授が就任されています。認知症関連では岩田教授の治療法開発研究班、佐藤教授の診断法開発研究班(日本医療研究開発機構)、小澤教授の長崎県基幹型認知症センターがすでに稼働しています。神経感染症分野では西田教授グループのプリオン病研究がある。脳神経外科では脳腫瘍の研究に加え、脳血管障害後の骨髄幹細胞移植療法の実用研究が注目されています。神経変性疾患に関しては解剖学の松本准教授、感染分子の石橋准教授らがシヌクレイノパシー、タウオパチーの研究を進めております。工藤教授と淵上准教授らは脳神経イメージングの臨床研究を、淵上准教授と工藤教授らはアミロイドイメージングの基礎研究を進めています。こうした研究者が集まる場、協働する場が形成されると非常にユニークな新しい研究が生まれると期待しています。

脳科学ユニット長 教授:佐藤克也