スペシャルインタビュー“長崎大学の研究者たち”

WHO勤務時代に認識した
国際コミュニケーションの重要性

森田公一

蚊やダニなどの昆虫を介して伝染する熱帯病などを主に研究しています。デング熱及びデング出血熱や西ナイル熱、黄熱病や日本脳炎などのウイルスがどのように広がっていくのか、どんな診断薬やワクチンの開発、そしてそれらをどの様に提供すれば感染を早期に封じ込めることができるのかを突き詰めていくのが、私の研究者としてのミッションです。

2011年からは、独立行政法人国際協力機構(JICA)と独立行政法人科学技術振興機構(JST)による「地球規模課題対応国際科学技術協力」(SATREPS)の研究プログラムで、実際にケニアでフィールドワークにも取り組んでいます。ケニアでの研究は、感染症の拡大を防止するために、感染症を早期に察知できるキットの開発と携帯電話網を用いた迅速対応システムの構築がテーマです。黄熱病やリフトバレー熱などの感染症を安価で迅速に診断できるキットを開発し、地方の小規模な医療機関でも感染症を察知可能にして迅速な対策により被害を最小限に食い止めるのが狙いです。

森田公一

もともとこの分野に進もうと考えたのは、大学受験時に読んだガイドブックがきっかけでした。長崎大学に熱帯医学研究所という施設があるのを知り、「おもしろそうだな」という感覚だけで選んだのです。しかし毎年2000万人以上の人が感染するデング熱やデング出血熱のような熱帯病が、地球のあちこちで猛威を振るっているのを目のあたりにするにつれ、国際的な場でこの分野に取り組むことの重要性を認識し、ライフワークとすることにしたのです。

その思いを一層強くしたのが、世界保健機関(WHO)に出向中に鳥インフルエンザ対策にあたった時の経験です。私は1995年から1998年にかけてWHOに出向しておりましたが、ちょうどその頃香港で鳥インフルエンザ(H5N1)のヒト感染が発生しました。鳥インフルエンザのような新興感染症は、国境に関係なくすぐに拡大します。一国で到底対応できるようなものではなく、国際機関が主導となって拡大を防がなくてはなりません。WHOにいた私はあらゆる国の関係者と協力しながら、多国籍のチームを結成して現地で2週間の調査を実施。その後、市場や養鶏場など拡大防止のキーとなりそうなエリアでの具体的な対策の提言や国際協力に従事しました。

その時の経験から、熱帯病・新興感染症などの対策には、ウイルスに関する知識だけでなく、専門家同士が国境を越えてコミュニケーションをとる能力が重要なことを認識しました。WHOへの出向を終えて長崎大学に帰ってきた私は、それを具体的なプログラムに落とし込み、熱帯病対策に取り組む次世代のリーダー育成に励んでいます。

研究室にとどまらず目を外へ向けよう

森田公一

熱帯病や感染症の分野で国際的に活躍するリーダーを目指すなら、学生は研究室の中だけにとどまってはいけません。熱帯病や感染症で困っている人たちや、そこで活躍している人たちに会いに行き、自分たちに何が求められているのかを考えるのが重要と考えています。日本では若者の内向き指向が強まっていると言われますが、新しいことに対する好奇心を本当に持っている学生ならば、おのずから目は国内にとどまらず外の世界へ向くはずです。

研究は、分からないことにチャレンジするからおもしろく、社会に有益なのであり、分かっていることを繰り返したのでは意味がありません。熱帯病や感染症の研究も、分からないことに対する興味すなわち好奇心を持ち続け、それを追究していくことに価値があると考えています。学生に好奇心を持ってもらうために、熱帯病や感染症に苦しむ地域に出向いて問題を自分で考えさせるようなプログラムも用意し、好奇心を持ち続ける人材を育成していきたいと考えております。

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